NTT基幹システム移行にAI
NTT DATA Business Solutionsは2026年10月12日、会社の基幹システム「SAP」の移行にAIエージェントを使う枠組み「Elevate」を発表しました。AIがチャットで質問に答えるだけでなく、会社の業務システムの作業工程に入って働く流れを示すニュースです。事例も3社紹介されましたが、効果を示す数字はまだ出ていません。何が発表され、何がわかっていないのかを整理します。
【出典元】NTT DATA Business Solutions launches “Elevate”(PR Newswire)
会社の基幹システムの移行にAIが入る
SAPは、多くの大企業が使っている基幹システムです。販売、購買、会計、在庫など、会社の中心となる業務のデータをまとめて管理しています。このシステムを新しい形に作り替える作業は大がかりで、調査から切り替えまで、多くの人手と時間がかかります。
Elevateは、この作業を進めるための枠組みです。ソフトを買って使うタイプの製品ではなく、NTT DATAのコンサルタントが導入や移行を進めるときの進め方にあたります。その進め方に、AIエージェント(目標を伝えると、自分で手順を考えて作業を進めるAI)を組み込みました。
狙いは、SAPの刷新プログラム「RISE with SAP」とAIの導入を、別々ではなく一緒に進めることです。別々に進めると複雑になり、動きが遅くなるという問題意識が示されています。
AIが手伝う5つの工程
発表で挙げられた、Elevateが支援する工程は次のとおりです。
| 工程 | 内容 |
|---|---|
| 評価 | 今のシステムの状態を調べ、何をどう移すかを見極める |
| 移行準備 | データや設定を、新しいシステムへ移せる状態に整える |
| テスト | 移行後のシステムが正しく動くかを確かめる |
| クリーンコア導入 | 独自の改造を減らし、標準の機能を中心に使う形にする |
| イノベーション支援 | 移行後に、新しい機能や使い方を取り入れる |
どれも、時間のかかる繰り返し作業が多い工程です。AIエージェントは、こうした作業を自動化し、業務の文脈をふまえて作業を進める役割を担います。
3社の事例は業務の一部をAIが担う
NTT DATAは、AIの活用事例として3社を紹介しています。
| 会社 | AIが担った業務 |
|---|---|
| Lemvigh-Müller | 仕入先に関わる確認業務の処理 |
| zeb | コンサルティング業務の流れ(ワークフロー)の調整 |
| Synthomer | 販売の注文処理 |
3社とも、効率、正確さ、意思決定が良くなると説明されています。ただし、発表には業種も、削減できた時間や費用の数字も書かれていません。事例は「AIがこういう業務に使われている」という紹介にとどまります。
このほか、NTT DATAは文書処理の自動化に使うソフト「MAKIRA」や、データの品質を保つ「GLASSWING」にもAIを取り入れると発表しています。
人の監督と社員教育が前提
AIに作業を任せるといっても、人が見ない状態にはしません。発表では、安全性、作業の追跡のしやすさ、人による監督を確保する仕組みであることが強調されています。AIが何をしたのかを後から確認できて、人が最終的に判断する形です。
もう1つの柱が、人の側の教育です。NTT DATAは、コンサルタントがAIと一緒に働くための知識と考え方を身につける全社的な研修を用意しています。道具を入れるだけでなく、使う人を育てることも含めた枠組みです。
自社の業務に置き換えて考える
基幹システムの移行は大企業の話ですが、「AIを業務の工程に入れる」考え方は、身近な仕事にも当てはまります。AIの導入を検討するときは、次の3点を確認すると進めやすくなります。
- 時間のかかる繰り返し作業はどれか(確認、転記、テストなど)
- AIの作業を、人が確認する場所をどこに置くか
- 使う人が、AIと一緒に働く方法を学ぶ機会があるか
Elevateが「道具」「監督」「教育」をそろえた枠組みになっているのは、この3点が欠けるとAI導入が進みにくいためと考えられます。これは発表の説明ではなく、発表内容からの読み取りです。
効果と提供条件はまだ不明
ここまでが発表された内容ですが、判断に必要な情報は、まだそろっていません。
- 効果の数字:効率化の割合や、移行期間の短縮などは示されていません
- 提供時期と地域:発表には記載がなく、日本で使えるかは確認できていません
- 料金:記載がありません
日本語の公式発表も、今回の調査では確認できませんでした。日本の企業が使えるかどうかは、NTTデータの案内を待つ必要があります。
まとめ
Elevateの発表は、AIエージェントが会社の基幹システムの作業工程に入る動きを示しています。調査、移行準備、テストのような繰り返し作業をAIが担い、人が監督する形です。一方で、効果の数字や提供条件は未公表です。今回の発表は、成果の証明というより、方向性の表明として受け止めるのが妥当です。