AIが工事の抜け漏れ予測
建設現場の「うっかり」を、AIが1〜2か月先まで見通して防ぎます。富士通は2026年8月25日、東急建設・北野建設と共同で建設工程管理支援AIの実証実験を始めたと発表しました。図面や作業日報、法令の情報までまとめて読み込み、申請忘れや資材の手配漏れを根拠つきで先回りして知らせる仕組みです。人手不足とベテラン頼みという建設業の悩みに、正面から向き合う試みです。
【出典元】富士通、東急建設および北野建設と、建設工程管理支援AIの実証実験を開始(富士通)
1〜2か月先の漏れを提示
このAIの役割は、遅れが起きてから知らせることではありません。1〜2か月先の工程を見渡し、資材や人員の手配、確認すべき事項について「抜けているかもしれない候補」を先に示します。
分析対象は現場に散らばるさまざまなデータです。
- 図面、工程表、作業日報などの実績データ
- 手続き・承認・検査の情報、安全指示の情報
- 官公庁や自治体が定める建設工事の法令・条例・規則
法令まで踏まえるため、必要な申請や検査、重機の手配、協力会社との調整に漏れがないかを確認できます。「なぜそれが漏れなのか」という根拠もあわせて示す点が、現場での納得感につながります。
工程表と日報のズレも検知
もう一つの機能が、計画と実態の差を見つけることです。工程表と日報を突き合わせて差異を分析し、進みを妨げている要因の候補を抜き出します。
建設現場では、多数の協力会社と資機材が同時に動きます。工程管理、資材手配、申請や検査への対応が複雑に絡み合うなかで、ズレに気づくのが遅れると手戻りが発生します。AIが早い段階で違和感を拾い上げれば、現場責任者は素早く判断を下せます。
ベテラン頼みからの脱却
この取り組みの背景には、建設業界が抱える構造的な課題があります。人手不足、労働者の高齢化、熟練者への業務依存です。限られた人数で幅広い業務をこなす必要があり、段取りの抜け漏れが工程遅延や安全上のリスクを招きかねません。
富士通が目指すのは、経験豊富な現場監督の知見を組織で使える形にすることです。それにより、若手でも質の高い現場運営ができる仕組みを作ろうとしています。働き方改革への対応が求められるなか、生産性向上と知見の継承を同時に狙う設計です。
2社の別々の現場で検証
実証は、川崎市にあるFujitsu Technology Park(FTP)の再開発現場で行われます。期間は2026年8月3日から12月25日までです。
| 企業 | 役割 |
|---|---|
| 富士通 | AIの企画・開発、各現場データの分析と検証 |
| 東急建設・北野建設 | 現場の知見と検証データを提供、実務の観点から評価とフィードバック |
興味深いのは、2社が同時並行で進める別々の工事を対象にしている点です。会社ごとに図面や工程表、日報の形式も業務の進め方も違います。その違いを越えて使えるかどうかまで検証します。
今後はBIMデータとも連携
実証で得た課題をもとに、富士通はAIの精度を高めていく方針です。今後はAIプラットフォーム「Fujitsu Kozuchi」や、量子インスパイアード技術「デジタルアニーラ」を活用した高度化を予定しています。
さらに将来は、写真データや点群データ、施工図、BIMデータ(建物の3次元モデルに部材や仕様の情報を持たせたデータ)、建設会社の社内ナレッジとの連携も視野に入れています。現場のあらゆる情報をつないで判断を支える方向です。
まとめ
富士通らの建設工程管理支援AIは、遅れを記録するのではなく、遅れの芽を先に摘む仕組みです。法令まで踏まえて1〜2か月先の漏れを根拠つきで示し、工程表と日報のズレも拾い上げます。人手不足と熟練者依存に悩む業界にとって、若手を支える現実的な一手になりそうです。12月までの実証結果が、他の現場への広がりを占うことになります。