松尾研、高校AI教材を無償提供

松尾研、高校AI教材を無償提供

AIを「使える」だけでは足りない。そんな問題意識から、日本のAI研究をけん引する東京大学松尾・岩澤研究室(松尾研)が動きました。同研究室は2026年8月25日、高校生向けAIカリキュラムを実際の授業で使う「トライアル校」「パイロット校」を全国から公募すると発表しました。2単位・約60コマという本格的な内容を、教材から指導案まで原則無償で提供します。

【出典元】高校生向けAIカリキュラムの「トライアル校・パイロット校」を全国公募(東京大学松尾・岩澤研究室)

60コマの本格カリキュラム

用意されたのは、体験授業の域を超えた分量です。導入を含む5つのモジュール・全4章で構成され、2単位(約60コマ相当)にわたります。想定するのは、数学Ⅰ・Aと「情報Ⅰ」を履修済みの高校1年生相当です。

とはいえ、難解な理論を並べる内容ではありません。数式を極力減らし、図解を中心にした構成で、サンプルコードを動かしながら学べるよう設計されています。モジュール単位で分かれているため、「情報Ⅰ」や探究の授業に組み込む使い方もできます。

指導案まで丸ごともらえる

学校側の負担を減らす工夫も徹底されています。提供されるのは教材だけではありません。

  • カリキュラムガイド
  • 単元計画・指導案・評価基準
  • ipynb形式の教材・演習プログラムを含む授業パッケージ

これらが原則無償で提供されます。AIに詳しい教員がいない学校でも、そのまま授業を始められる形になっている点が実務的です。「何をどう教え、どう評価するか」まで含まれているため、導入のハードルが大きく下がります。

環境構築がいらないPyHiroba

プログラミング教育でつまずきがちなのが、パソコンの準備です。この課題に応えるのが、あわせて公開された学習環境「PyHiroba」です。

PyHirobaは、OSやICT環境に依存せず、ブラウザだけでPythonの演習ができる仕組みです。現在β版が公開されています。学校ごとに機材の事情は違いますが、ブラウザさえ動けばよいため、環境の差に左右されずに実習を進められます。

すでに552名で実証済み

この取り組みは、構想だけの段階ではありません。2025年度には、全国3校・計552名の高校生を対象とした先行モデル授業が2026年1月から3月にかけて実施されました。

その成果は、文部科学省の『中等教育資料』2026年6月号にも掲載されています。実際の教室で試したうえで全国展開に進んでいるため、机上の教材ではありません。

締切は9月30日

募集は2つの区分に分かれています。学校の準備状況に応じて選べます。

区分実施時期
トライアル校2026年度中に、モジュール単位で先行実施
パイロット校2027年度以降に、通年で導入

対象は全国の高等学校・中等教育学校・教育委員会で、応募はGoogleフォームから受け付けています。一次締切は2026年9月30日です。松尾研は、AIを使えるだけでなく仕組みと限界を本質的に理解し、自ら課題を設定して解決まで導く力を育てることを目的に掲げており、次期学習指導要領への先行的な対応と位置づけています。

まとめ

松尾研の高校生向けAIカリキュラムは、教材・指導案・評価基準・演習環境まで一式を無償で提供する、実践重視の取り組みです。552名での先行授業を経ており、内容の裏づけもあります。AI教育を始めたいが何から手をつけるか迷っている学校にとって、有力な選択肢になります。関心のある教育関係者は、9月30日の一次締切までに検討を進めるとよいでしょう。

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