チームみらい【政治資金を可視化】するOSSツールを公開 公開2日で20万PV突破

チームみらい(国政政党)は10月2日、政治資金の流れを可視化するプラットフォーム「みらい まる見え政治資金」を公開しました。ソースコードはオープンソースとして一般に公開され、透明性の高い政治資金の見える化を目指します。
公開から2日(10月4日時点)で約20万PVを記録し、ダウンタイムや大きな不具合は発生していないとしています。永田町エンジニアチームの伊藤さんは「公共性のあるサービスとして、安定性と使いやすさを最優先に設計した」とコメントしています。
【出典元】
・チームみらい【公式】note「『みらい まる見え政治資金』を公開!」
・Jun Ito note「『みらい まる見え政治資金』を支える技術-国政政党がリリースしたOSSの技術選定と実装について」
・Jun Ito note「95%以上をLLMが実装。『みらいまる見え政治資金』を45日で完成させた、AIネイティブな開発手法についてご紹介」
サービスの目的
「みらい まる見え政治資金」は、政治団体の資金の流れを誰でも理解しやすく公開することを目的としたプラットフォームです。主な特徴は次の通りです。
- 収入・支出を視覚的に表示します。
- 表示データをCSVでダウンロードできます。
- オープンソースとして公開し、他団体や開発者による再利用を促進します。
短期開発と汎用性を両立した技術設計
本プロジェクトは参院選の「100日プラン」の一環として開発されました。短期間でのリリースを実現しつつ、将来の横展開に備えて汎用性も確保しています。影響の大きいデータベース層は厳密に抽象化し、表示層はスピード重視で実装する方針を採用しています。
採用された技術スタック
レイヤー | 採用技術/方針 | ねらい |
---|---|---|
アプリ/ホスティング | Next.js(App Router)+ Vercel | SSR/キャッシュの標準対応でSEO・表示速度を確保 |
データベース/BaaS | Supabase(Postgres) | ブランチごとの環境用意が容易、ロックイン回避 |
データアクセス | RepositoryにInterface必須 | DB切替(例:MySQL)にも対応可能 |
CI/整形 | Biome + simple-git-hook | 自動整形/静的検査で品質担保 |
プレビュー | Vercel Branch Preview | PRごとの即時動作確認で開発を高速化 |
高速で安定したキャッシュ戦略
政治資金データは更新頻度が低めであるため、キャッシュが効果を発揮します。
- すべてのデータ取得をサーバー関数経由に統一します(クライアントfetchは不使用)。
- トップページはHTMLキャッシュ(ISR)とサーバーキャッシュの二重構成にします。
- 検索や並び替えのあるページはサーバーキャッシュを主軸にします。
- 結果としてキャッシュヒット率98.3%を達成しています。
アクセシビリティとユーザー体験への配慮
公共性の高いサービスとして、誰もが使いやすい設計に配慮しています。
- キーボード操作(Tab/Enter)でのナビゲーションに対応します。
- フォーカス時の見え方を整え、操作性を高めます。
- スクリーンリーダー向けテキストを実装し、図表の内容を読み上げ可能にします。
- PageSpeed Insightのアクセシビリティスコアは91点です。
「単式で表示、複式で保存」――会計の壁を越える工夫
政治資金報告は単式簿記(現金主義)で行われますが、データソースは複式簿記(発生主義)です。
- 保存は複式簿記で整合性を確保します。
- 表示は単式簿記で政治資金報告書との比較を容易にします。
- 貸借対照表も公開し、資産や負債の全体像を把握しやすくします。
「気持ちが湧く」可視化への再設計
当初の「報告書分類のまま」では直感性に欠けたため、再設計しています。
- 親しみやすい独自カテゴリを仕訳時に付与します。
- Sankey図などで可視化し、「印刷代の比率」「SNS広告はX中心」などの気づきを得やすくします。
- CSVダウンロードで第三者検証や再分析を容易にします。
LLM中心の開発体制 ― 95%以上をAIが実装
開発の約95%(体感では99%近く)をLLMが実装し、約15,000行を45日で仕上げています。
- 95〜99%をLLMで実装:約15,000行のコードをAIが自動生成。
- CLAUDE.mdによる設計ルール管理:設計原則をMarkdownで定義し、AIが遵守。
- ドキュメント駆動開発:複雑な機能は設計書をAIに先に書かせ、レビュー後に実装。
- 自動テスト・自動整形:Biome+CI環境で品質を自動担保。
- VercelのBranch Previewで即時確認:AIが生成したコードをブラウザで動作確認。
オープンソースとしての拡張性
OSSとして他団体でも使いやすい構造にしています。
- 会計ソフトごとのCSV変換をアダプター層に分離します。
- DB投入時に中立スキーマへ変換し、Webアプリはソフト非依存にします。
- 将来的にfreeeや弥生などへの対応も容易です。
今後の展望
公開直後から、開発者や市民によるCSV分析・再可視化が進んでいます。チームみらいはオープンソースとして改良提案を受け入れつつ、他団体への横展開と透明性の社会実装を進めていく方針です。最終的には、政治資金収支報告書をワンクリックで作成できる機能実装も目指しています。
まとめ
国政政党が政治資金の流れをOSSとして公開した意義は大きいと考えます。短期間の開発で安定運用と検証可能性を両立した「みらい まる見え政治資金」は、政治の透明性を押し上げる実践的な一歩になります。今後の機能拡張と普及により、より開かれた政治の実現が期待されます。