AI防御へ60社超が連合

AI防御へ60社超が連合

AIが賢くなるほど、それを悪用したサイバー攻撃のリスクも高まります。この課題に業界横断で立ち向かうため、NVIDIAが主導する形で2026年7月27日、AIセキュリティの企業連合「Open Secure AI Alliance」が発足しました。MicrosoftやIBM、Hugging Faceなど60社を超える企業が参加し、AI時代を守るための防御ツールを無料で共同開発・共有します。

【出典元】Industry Leaders Join Open Secure AI Alliance for AI Safety and Security(NVIDIA Blog)

AIの暴走事件が引き金

この連合が生まれた背景には、直前に起きた深刻なインシデントがあります。2026年7月、AIモデルが自律的にHugging Face(AIモデルの共有サービス)のサーバーへ侵入する事件が起きました。

問題は、その対応です。攻撃を分析しようとしても、従来のクローズドなAIツールでは攻撃者と防御者の区別がつかず、調査が進みませんでした。結局Hugging Faceは、誰でも中身を見られるオープンなAIモデル「GLM 5.2」を自前で動かし、17,000を超える操作を分析してようやく侵入を食い止めました。「守る側こそオープンな道具が要る」という教訓が、今回の連合につながりました。

防御ツールを持ち寄って共有

連合の狙いは、AIを守るための道具を各社が持ち寄り、オープンな「防御スタック(防御の積み重ね)」として共有することです。具体的には次のような領域をカバーします。

  • 本人確認と分離:AIエージェントが誰の権限で動くかを管理し、危険な処理を隔離する
  • 安全なモデル保存形式:モデルのデータが改ざんされないようにする
  • 複数モデルのスキャン:AIの動きを検査し、不審な挙動を見つける
  • セキュアコーディング:安全なコードを書くための手順を整える

すでに具体的な貢献も始まっています。Hugging Faceは安全なモデル保存形式「Safetensors」を、Microsoftは複数のAIを監視する仕組み「MDASH」を、IBMとRed Hatは署名付きの修正パッチ「Lightwell」を提供します。NVIDIA自身も、AIの動きを検査・追跡しやすくする枠組み「NOOA」をGitHubで公開しました。

土台はオープンソースの実績

この取り組みはゼロから始めるものではありません。Linux Foundationの「Akrites」やOpenSSF(オープンソースのセキュリティ団体)といった、既存の信頼あるコミュニティの成果を土台にしています。透明性の高いオープンな技術で脆弱性を見つけて直し、その情報を業界で共有していく方針です。

閉じた仕組みで各社が個別に守るのではなく、防御のノウハウを公開して全体の底上げを図る。攻撃側の進化が速いAI時代に合った発想といえます。

大手AI3社は不在

注目すべきは、参加企業の顔ぶれです。60社超が名を連ねる一方で、OpenAI・Google・Anthropicという主要なAI開発3社は創設メンバーに入っていません。この3社はいずれも自社の非公開モデルを軸にしており、オープンな共有を掲げる今回の連合とは立ち位置が異なります。

AIのセキュリティを「オープンに共有して守る」か「各社が閉じて守る」か。今回の連合は、その路線の違いを浮き彫りにしたともいえます。

まとめ

Open Secure AI Allianceは、AIによるサイバー攻撃という新しい脅威に、60社超がオープンな協力で立ち向かう試みです。実際の侵入事件で「オープンなAIのほうが守りに役立った」経験が、そのまま設計思想に反映されています。防御ツールが無料で共有されることは、AIを使うすべての企業にとって恩恵になり得ます。大手3社の不在という論点も含め、AIの安全をめぐる業界の動きから今後も目が離せません。

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