町工場、AIで内製DX

町工場、AIで内製DX

金属加工を手がける岡田金属工業所が、生成AIとノーコードツールを使って自社専用のアプリを約20個作り上げました。
エンジニアを雇わず、現場のスタッフ自身がスプレッドシート管理からの脱却を進めています。専門知識がなくても、身近な道具でここまでの業務改善ができる好例です。

【出典元】岡田金属工業所 DX推進の取り組み

紙の台帳から自社アプリへ

岡田金属工業所では、在庫管理や品質管理をこれまでエクセルの表計算ソフトで行っていました。しかし、入力ミスや更新の手間が課題となっていました。そこで同社は生成AIと、プログラミングの知識がなくてもアプリを作れる「ノーコードツール」を組み合わせ、業務に合わせた専用アプリを約20個内製しています。

引用:OKADA Board

同社にはシステムエンジニアが一人もいません。それでも生成AIやノーコードツールを使いこなすことで、ほとんどコストをかけずに業務のデジタル化を実現しています。外部の開発会社に依頼すれば数百万円かかることも珍しくないシステム開発を、現場のスタッフだけで完結させている点が最大の特徴です。

現場と間接業務、両方をカバー

内製した約20個のアプリは、大きく現場業務向け間接業務向けの2つに分かれています。何をどんなアプリに置き換えたのか、表にまとめると以下の通りです。

◆20個のアプリの内訳

分類業務内容アプリ化した内容
現場業務向け在庫管理部材・製品の在庫数をリアルタイムで把握
クレーム管理不良品の発生状況と対応履歴を記録
作業実績管理日々の作業内容・進捗を記録
測定器管理測定器の校正状況・貸し出し状況を追跡
社内設備管理工場設備の稼働状況・保守情報を管理
間接業務向けお弁当管理社員のお弁当注文数を集計
出欠連絡休みの連絡をやり取り

生産管理のような重い業務だけでなく、こうした地味だが毎日発生する事務作業まで内製アプリに置き換えている点が特徴です。現場を知るスタッフ自身がアプリを作るため、実際の業務フローに合わせた細かい調整がしやすく、使われないまま放置されるシステムになりにくいという利点もあります。

熟練工の知識をAIが継承

製造業では、長年の経験を積んだ熟練工の頭の中にしかない「暗黙知」をどう若手に伝えるかが長年の課題でした。同社が導入した「OKADA Knowledge Board AI」は、この暗黙知をデータとして残せるようにするシステムです。

これまで手作業で資料を作っていた工程が自動化され、資料作成にかかる時間を約90%削減できたといいます。ベテランが持つ勘やコツを言語化・データ化しておくことで、退職や異動があっても技術が途切れにくくなるという利点があります。

iPad導入で紙を大幅削減

同社は全工場員にiPadを配布し、図面や作業報告書、作業手順書をタブレット上で管理する体制に切り替えました。紙の書類を印刷して配る手間がなくなり、1日あたり約300枚の紙の削減につながっています。

作業手順の変更があった場合も、紙の差し替えが不要になり、全員に最新版をすぐに共有できるようになりました。現場の情報伝達のスピードも上がっています。

設備監視とセキュリティも強化

工場内の約170台の設備は中央で一元監視されており、稼働状況やパフォーマンスをデータとして把握できるようになっています。どの設備がどれだけ稼働しているかが見える化されることで、生産計画の立てやすさにもつながります。

また、約40台の防犯カメラによる24時間監視体制と、顔認証システムを使った出退勤管理・検温の同時実施も行われています。安全管理と労務管理を一つの仕組みでまとめて効率化している点も、中小製造業のDX事例として参考になります。

まとめ

岡田金属工業所の事例は、大がかりなシステム投資をしなくても、生成AIとノーコードツールを活用すれば現場主導でDXを進められることを示しています。人手不足が課題となりやすい町工場にとって、業務の効率化と技術継承を同時に実現するヒントになる取り組みといえます。

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