DeepSeek、アフリカで普及

DeepSeek、アフリカで普及|Aibrary

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Microsoftの最新レポート「Global AI Adoption in 2025」によると、中国発のオープンソースAI「DeepSeek」は高性能ではないにもかかわらず、アフリカや一部新興国で急速に普及しています。その理由は、無料・決済不要で現地に合わせて使えるからです。

DeepSeekの事例は、これからのAI普及が「性能競争」ではなく、どれだけ多くの人が実際に使えるかに軸足を移していることを示しています。

この記事のポイント

  • AI格差の正体は、技術力ではなく「使える条件の差」
  • DeepSeekは高性能ではないが、無料・決済不要で新興国に広がった
  • AIは先進国から順に普及するとは限らない
  • オープンソースはAIの主導権を利用側に近づけた
  • これからのAI競争は「性能」より「実際に使われるか」が問われる

【出典元】
2025年の世界のAI導入:デジタル格差の拡大
・PDFレポート

AI格差はアクセスの差で生じる

AI格差という言葉は、これまで「技術力の差」として語られることが多くありました。先進国は高性能なAIを開発でき、新興国はそれを使えない。一見すると、もっともらしい説明です。

しかし、Microsoftのレポートが示した現実は、もう少し複雑です。多くの地域でAI利用が進まない理由は、必ずしも性能不足ではありません。

  • 利用料金が高い
  • クレジットカードや決済手段がない
  • 自国の言語に対応していない
  • サービス自体にアクセスしづらい

こうした条件が重なり、「使いたくても使えない」状態が生まれていました。AI格差の正体は、性能の差というより、アクセスの差にあります。

オープンソースのDeepSeek

DeepSeekは、中国発の生成AIで、最大の特徴はオープンソースである点です。モデルはMITライセンスで公開され、誰でも自由に利用・改変できます。さらに、DeepSeekは次のような条件で提供されています。

  • 完全無料
  • Web・モバイルから利用可能
  • クレジットカード登録が不要

多くの生成AIサービスが、有料プランや決済を前提としている中で、DeepSeekはその前提を取り払いました。この設計思想こそが、後述する普及の鍵になります。

DeepSeekはアフリカと一部新興国で伸びた

DeepSeekが大きく利用を伸ばしたのは、北米や西欧ではありません。レポートが注目しているのは、次の地域です。

  • アフリカ諸国
  • 中国、ロシア、イラン、キューバなど一部の新興国
  • 欧米製AIサービスへのアクセスが制限されやすい地域

特にアフリカでは、DeepSeekの利用率が他地域と比べて2〜4倍高い水準にあるとされています。

地域DeepSeekの利用傾向
北米・西欧低い
中国・一部新興国高い
アフリカ非常に高い

この分布は、AI普及が「先進国から順に広がる」という従来の想定を崩すものです。使える条件が整った場所から、AIは広がることがはっきりと示されています。

「無料・言語・運用」でアクセス障壁を下げた

Microsoftのレポートを読み解くと、DeepSeekは「AI格差を解消しようとして作られた存在」というより、既存の生成AIが取りこぼしてきた現実的な問題を、結果的に突いた存在だと分かります。その背景には、これまで見過ごされがちだった3つの壁があります。

料金と決済が生む「最初の壁」

多くの生成AIサービスは、利用開始の段階で課金体系を前提としています。無料プランがあったとしても、クレジットカード登録や有料プランへの誘導が避けられません。しかし、グローバルサウスを中心に見ると、

  • クレジットカードを持たない人が多い
  • 外貨建て決済が難しい国がある
  • 少額でも継続課金に心理的ハードルがある

といった事情が存在します。この時点で、AIは「使い方を学ぶ以前に、触れること自体ができない存在」になっていました。DeepSeekは、この最初の入口にある壁を、完全無料・登録不要という形で取り払いました。
重要なのは、性能ではありません。「試してみる」という行為を可能にしたことが、普及の出発点になったのです。

言語と用途の「現実とのズレ」

AI格差を語る際、しばしば見落とされるのが言語の問題です。英語で高性能なAIであっても、現地の言語や文脈で自然に使えなければ、日常的な道具にはなりません。

多くの生成AIは、英語圏の利用を前提に設計されています。その結果、新興国では次のようなズレが生じていました。

  • 母語での表現が不自然
  • 学校や役所での利用に向かない
  • ローカルな業務や文化に合わない

DeepSeekはオープンソースであるため、現地での改良や派生モデルの開発が可能です。
これにより、AIは「外から与えられるもの」ではなく、「自分たちの文脈に合わせて使えるもの」へと変わりました。

この点は、単なる翻訳対応以上に重要です。AIが社会に根づくかどうかは、言語だけでなく用途が生活に合っているかにかかっています。

オープンソースがもたらした「主導権の移動」

DeepSeekがAI格差を埋めた最大の要因は、オープンソースである点にあります。これは技術的な話にとどまりません。

従来の生成AIでは、

  • どの機能を使えるか
  • どの国で提供されるか
  • どの条件で制限されるか

といった決定権は、すべて提供側にありました。

DeepSeekは、その構造を変えました。モデルが公開されていることで、大学、企業、政府、開発者が自分たちでAIを動かし、調整し、広げることが可能になります。

つまり、AIの主導権が「一部の企業」から「使う側の社会」へと移動したと言えます。この変化は、AI格差を「支援で埋める問題」から、「自立的に使えるかどうかの問題」へと変えました

このDeepSeekの事例からは、AI普及をめぐる重要な示唆が見えてきます。

  • 最先端でなくてもAIは広がる
  • 高性能でも使えなければ意味がない
  • AI格差は能力ではなく条件の問題である

AI格差を埋めたのは、DeepSeekの技術力そのものではありません。人がAIに近づけたのではなく、AIが人に近づいたことが、結果として格差を動かしました。

「安全・把握・影響力」の課題

一方で、DeepSeekの拡大は新しい課題も浮き彫りにしています。

  • 安全性や悪用への対策が統一されにくい
  • 利用実態を把握しづらい
  • 国家間の影響力競争に使われる可能性

Microsoftのレポートでも、オープンソースAIが地政学的な意味を持ち始めている点が指摘されています。AIはもはや技術だけの問題ではなく、国際関係とも結びついています。

AI格差の次の焦点は「どのAIが使われるか」

これからのAI競争は、「誰が最も高性能なAIを作れるか」では終わりません。むしろ重要になるのは、どのAIが、どの地域で使われるかです。

  • 高性能でも使えないAI
  • 性能はほどほどでも、広く使われるAI

DeepSeekの事例は、後者が社会に与える影響の大きさを示しています。グローバルサウスは、今後のAI普及における最大の主戦場になる可能性があります。

まとめ

DeepSeekは、AI格差の「原因」ではありません。これまでの生成AIが、多くの人にとって手の届かない存在だったことの結果として登場しました。
Microsoftのレポートが示しているのは、AI格差の本質が性能ではなく、アクセスにあるという現実です。今後のAI普及は、技術開発以上に、どのような形で提供されるかが問われる時代に入るのかもしれません。

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