Kling AI、AI生成アンソロジーシリーズ『Loading…』を公開

Kling AI公式X(https://x.com/Kling_ai/status/1937888524872667328)

【画像】Kling AI公式Xより

中国の動画生成プラットフォーム「Kling AI」は、新作アンソロジーシリーズ『Loading…』を公開しました。7話構成の短編オムニバスで、北京での劇場プレミア上映を経て、7月2日よりYouTubeで世界配信が始まっています。

◼︎エピソード一覧

エピソード名ジャンル・概要
Martin Syndrome父親が体を入れ替える能力を使い、娘を救うため時間を超える物語
The Galactic Gut宇宙文明が「腸のレシピ」を高度技術と誤解する風刺SF
Sweet Dreams実験体として生まれた狼男がサイバーパンク施設を破壊
The Utopia Taoyuan飢饉の難民が神秘的な村に辿り着き、師によって試される寓話
Traveler and the Tiger旅人と虎の絆を描きつつ、裏切りに直面する寓話
Unforgivable戦時下の日本人少年を通じて罪悪感と戦争犯罪を描く
AmbivalenceAGIと異星人の脅威に直面し、人類を守るAI「Vitas」が登場するSF

Kling AIとは、快手(Kuaishou)制作のショート動画アプリ

Kling AIはショート動画アプリ大手・快手(Kuaishou)が開発する動画生成AIです。2024年に初公開され、短い映像を数分以内で生成できる性能や、複雑な動作・表情の再現力で注目を集めてきました。2025年にはバージョン2.1が公開され、品質と生成速度がさらに向上しています。Googleの「Veo」やOpenAIの「Sora」と並び、最新の動画生成AIの一つとされています。

『Loading…』の内容

今回のシリーズは、Kling AIと北京のクリエイティブスタジオ「Outliers」が共同制作しました。脚本や演出は人間のクリエイターが手がけ、映像生成にAIを活用。俳優の顔キャプチャや声優の演技も取り入れられています。

各話は独立した物語で構成され、SF、寓話、戦争劇など多彩なジャンルを展開します。映像表現も幅広く、クレイアニメ調、フォトリアル3D、サイバーパンクなど多様なスタイルが試みられています。

技術的特徴

人間とAIの協働
ストーリーと脚本は人間が作成。映像生成や一部のアニメーション処理をKling AIが担当。俳優の顔キャプチャや声優の演技も導入。

多彩な映像スタイル
クレイアニメ風、フォトリアル3D、サイバーパンク、寓話的表現など、1つのシリーズ内で幅広いビジュアル表現が試みられている。

高画質とスピード
1080p短編を1分以内で生成可能とされ、制作現場の効率化を実現。IMAX上映に耐えうる品質も確保。

課題と今後の展望

『Loading…』は、AI生成映像によるストーリーテリングの可能性を示す試みとして高く評価されています。一方で、キャラクターの一貫性や感情表現の精度には改善の余地があるとの指摘もあります。

  • 課題
    • 感情表現やキャラクターの一貫性にはまだ改善の余地
    • 長尺・複雑シーンの生成は依然としてリソース負荷が高い
    • 中国中心の展開で、国際的な浸透はこれから
  • 展望
    • 国際市場向けに多言語対応や文化的表現の強化が期待
    • 映像に加え、音楽や音響まで統合した映画的体験の実現が目指される
    • 外部クリエイターへのツール開放により、AI映画制作の裾野が広がる可能性

今後の展望

Kling AIは外部クリエイター向けの支援プログラムを進めており、今回のシリーズはその象徴的なプロジェクトと位置づけられます。今後は多言語対応や音響表現の統合が進めば、AI生成映像がより映画的な体験として浸透する可能性があります。

関連記事