総務省【自治体DX推進計画】住民生活を変える7つの取組

総務省【自治体DX推進計画】住民生活を変える7つの取組

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政府が、総務省から発表した「自治体デジタル・トランスフォーメーション(DX)推進計画【第4.0版】」は、人口減少や行政サービスの効率化といった課題に対応し、住民一人ひとりの利便性を高める「誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化」を目指しています。

【参照元】総務省:自治体DXの推進

1. 自治体DX推進の背景

新型コロナウイルス対応をきっかけに、行政のデジタル化の遅れやデータ活用の不十分さが課題として浮き彫りになりました。
さらに、人口減少による行政リソースの縮小が見込まれる中、持続可能な行政の仕組みが急務となっています。こうした状況を踏まえ、国と自治体が連携しながらデジタル社会の実現を進めていくのが本計画です。

2. 推進体制の整備

自治体DXは、単なるシステム導入ではなく、行政そのものの在り方を変える取り組みです。そのためには、トップの強い意思決定と、それを支える専門的な体制が不可欠です。
首長によるリーダーシップを軸に、CIOや補佐官など外部人材の知見を取り入れ、さらに職員自身のデジタルスキルを高めて「推進リーダー」を育てることで、全庁一丸となった変革が進みます。

ポイント

  • 首長のリーダーシップとCIO(最高情報統括責任者)の設置
  • CIO補佐官など外部人材の活用による知見の導入
  • 職員のデジタルリテラシー向上と「DX推進リーダー」の育成

3. 住民生活を変える7つのDX重点取組

住民生活を変える7つのDX重点取組
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自治体がDXを推進するにあたり、住民に最も影響を与える領域に焦点を当てた7つの取組が整理されています。以下では、それぞれの取組内容を順に見ていきます。

①フロントヤード改革

「フロントヤード」とは、住民と行政が接する最前線のこと。窓口やオンライン申請などが含まれます。

  • 行政手続きのオンライン化
    これまで紙の書類や窓口に限定されていた手続きを、マイナポータルなどを通じてオンライン完結できるようにします。例えば子育てや介護関係の申請、税申告など。
  • 「書かないワンストップ窓口」
    窓口で住所や氏名を何度も書く手間を省き、必要な情報はデータで共有。1回の入力で複数の手続きが完了する仕組みを導入します。
  • オムニチャネル化
    庁舎窓口だけでなく、郵便局、公民館、コンビニ、オンラインなど住民に近い場所から手続きが可能に。より便利で身近な行政サービスを実現します。

②情報システムの標準化・共通化

これまで自治体ごとにバラバラだった基幹システムを統一する取組です。

  • 基幹20業務を対象に標準化
    住民基本台帳、戸籍、税、福祉、国民健康保険など主要20業務を全国で共通化。ガバメントクラウドに移行し、運用コスト削減と効率化を図ります。
  • SaaS利用を前提にした調達
    システムを“所有”するのではなく“利用”する考え方へ転換。クラウドサービスとして提供されるSaaSを前提に導入し、柔軟性と更新のしやすさを確保します。

③公金収納のデジタル化

住民が支払う税や公共料金を、全国どこでも統一的に納付できるようにします。

  • eL-QRの活用
    eL-QR(地方税統一QRコード)を使い、スマホやATMから簡単に納付可能に。自治体ごとに異なっていた納付方法が統一され、全国どこでも同じ支払い体験を実現します。

④マイナンバーカードの普及・活用

マイナンバーカードを“生活のパスポート”として広く活用します。

  • 利用シーンの拡大
    健康保険証、銀行口座開設、転居手続き、税申告、救急搬送時の本人確認など幅広く活用。
  • スマホ搭載
    マイナンバーカードの機能をスマートフォンに搭載。カードを持ち歩かなくても本人確認や手続きができるようになります。

⑤セキュリティ強化

行政のデジタル化が進むほど、サイバー攻撃リスクも増大します。

  • CISO(最高情報セキュリティ責任者)の設置
    各自治体にセキュリティ担当責任者を設け、全庁的な対策を統括。
  • サイバー攻撃への備え
    ネットワーク防御や個人情報保護の仕組みを強化し、安心して利用できる行政サービスを維持します。

⑥AI・RPA活用

AIや自動化技術(RPA)を使って業務を効率化。

  • AI活用
    住民からの問い合わせにチャットボットで対応、相談窓口の効率化など。
  • RPA導入
    ルーチンワークを自動処理し、職員がより付加価値の高い仕事に集中できるようにします。

⑦テレワーク推進

職員の働き方改革もDXの一環。

  • 柔軟な働き方
    在宅勤務やサテライトオフィス勤務を可能にし、災害時やパンデミック時にも行政機能を継続できる体制を整備します。

4. デジタル社会の実現に向けた並行施策

行政の内側だけを変えても、暮らしが完全に変わることはできません。
地域の現場にAIやIoTを実装し、誰も取り残さない支援を整え、紙・対面前提の古いルールをデジタル前提に見直す「現場×包摂×規制改革」の三位一体で、日常の不便を着実に解いていきます。

  • 地域のデジタル実装:AIやIoTを使って地域課題を解決
  • デジタルデバイド対策:高齢者や過疎地住民が取り残されない支援
  • 規制改革:デジタル原則に基づき制度を見直し、柔軟な社会システムを構築

まとめ

「自治体DX推進計画4.0版」は、単なるシステム刷新ではなく、住民体験を重視した改革です。マイナンバーカードの活用、システム標準化、AIの導入といった施策は、行政サービスを効率的かつ人に優しい形に変えることを狙っています。
今後、全国の自治体でどこまで実行され、住民に実感できるサービス改善につながるかが注目されます。

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