Rolling Stone親会社がGoogleを提訴 AI要約「Overviews」が収益を脅かす

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Rolling StoneやThe Hollywood Reporterを発行するPenske Media Corporation(PMC)が、Googleを相手取り訴訟を起こしました。問題となっているのは、検索結果に自動生成される「AI Overviews(AI要約)」です。
記事内容をそのまま要約して表示することで、ユーザーが元記事を訪れる必要がなくなり、アクセス数と広告収益の大幅な減少につながっていると同社は主張しています。

【出典元】Rolling Stone’s parent company sues Google over AI Overviews

GoogleのAI Overviewsとは、検索結果に自動生成される要約

Googleが提供するAI Overviewsは、検索結果の最上部にAIが自動で生成した要約を表示する仕組みです。ユーザーは記事を開かずに必要な情報を得られるため利便性は高い一方で、情報源となる出版社への誘導が減ることが問題視されています。

Penske Mediaの主張:収益減少と二重のジレンマ

Penske Mediaは訴状の中で、AI Overviewsによって記事のクリック率が下がり、今年のアフィリエイト収益が3分の1以上減少したと述べています。
さらに、同社は次のようなジレンマを抱えていると指摘します。

  • Googleのクロールを拒否すれば検索結果から消え、さらに流入が減る
  • クロールを許可すればAI学習に利用され、収益を脅かされる

この状況は「自社の出版ビジネス全体を揺るがす」と危機感を示しました。

Google側の反論:利便性の強調と危機の認識

Google広報担当のJosé Castañeda氏は、「AI Overviewsによって検索がより便利になり、利用者も増えている」と正当性を強調しました。しかし同社は同時に「オープンウェブは急速に衰退している」とも認めており、すでに複数の独禁法訴訟に直面しています。

広がる訴訟の動き:AIとメディアの衝突の連鎖

今回の訴訟は、世界中で広がる「AIとメディアの対立」の一端に過ぎません。

  • 教育サービスのCheggは2025年2月にGoogleを提訴
  • 欧州では独立系出版社のグループが同様の訴えを起こしている
  • Encyclopedia BritannicaやMerriam-WebsterはPerplexityを提訴
  • News Corp、ニューヨーク・タイムズ、シカゴ・トリビューンなど大手メディアもAI企業を相手取り訴訟を進めている

こうした動きは、AIが既存の収益モデルを根本から揺るがしていることを示しています。

AI著作権問題の代表的なケース

出版社との対立以外にも、AIをめぐる著作権問題は各地で浮上しています。

  • Getty Images vs. Stability AI
     写真素材大手のGetty Imagesは、無断で自社画像を学習に使われたと主張し訴訟を起こしました。スクレイピングやAI学習の正当性が問われています。
  • Zarya of the Dawn事件
     Midjourneyで作られたイラストを含む漫画作品が米国で著作権登録されましたが、後に「AI生成部分は人間の創作と認められない」として保護が取り消されました。
  • Metaの“fair use”判決
     著者が自著をAI学習に使われたとしてMetaを訴えた裁判で、裁判所は「学習利用はfair useにあたる」と判断。著作物の学習利用が認められるかどうかをめぐる大きな前例となりました。
  • Disneyなどハリウッド大手 vs. MiniMax(中国)
     ディズニーやワーナーらが、中国のAI企業MiniMaxが無断で有名キャラクターをAIに利用したと提訴。著作権だけでなくブランド保護も争点になっています。

こうした事例は「AIで作られたものは誰の著作物か」「学習のために著作物を使うのは許されるか」といった根本的な課題を突きつけています。

今後の影響と展望

AIによる要約機能は、検索体験を便利にする一方で、出版社のビジネスを直撃しています。今後は次のような展開が考えられます。

  • 訴訟の結果次第ではAI要約の表示方法が規制される可能性
  • 出版社がAI活用と共存できる新たな収益モデルの構築が急務
  • 政府や規制当局による介入が強まる可能性

メディアとテック大手の攻防は今後も続き、AI時代の情報流通の在り方を大きく左右していくでしょう。

まとめ

Penske MediaによるGoogle提訴は、AIが生み出す利便性と、メディアの存続を支える収益構造が正面から衝突した象徴的な事例です。さらに世界では、AIをめぐる著作権問題が次々と持ち上がっており、法律や制度の見直しを迫る動きが広がっています。今後の動向は、世界中の出版社とテック企業にとって重大な分岐点となるでしょう。

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