Claude、顧客別に制限
AnthropicはClaude APIに「User Profiles」を追加しました。AIサービスを提供する会社が、自社の顧客ごとに識別IDを付けると、安全上の制限や利用停止を、問題のある顧客だけに適用できます。従来は、1社の違反が原因で、サービス提供会社の組織全体に制限が及ぶ可能性がありました。追加料金はありません。ただし、IDを付け忘れたリクエストは対象外です。仕組みと注意点を整理します。
【出典元】User profiles for end-customer attribution(Claude Platform Docs)/Claude Platform release notes
1社の違反で全体が止まる問題
Claude APIは、自社のサービスにClaudeを組み込むための窓口です。たとえば、あるAIサービスを100社が使っている場合、サービス提供会社は、100社分のリクエストをまとめて自社の名前でAnthropicに送ります。
Anthropicは、API経由の通信を自動で監視し、安全上の問題がないかを確認しています。従来は、100社のうち1社が不適切な使い方をすると、その制限が提供会社の組織全体に及ぶ可能性がありました。ほかの99社は何も悪くないのに、巻き添えでサービスが止まるおそれがあります。
たとえるなら、団体旅行で1人が問題を起こしたために、全員の予約が取り消されるようなものです。User Profilesは、この問題を防ぐための仕組みです。
顧客ごとにIDを付けて見分ける
仕組みは、顧客を一度登録して、そのIDを毎回の通信に付けるだけです。
- 新しい顧客が加わったときに、プロファイル(顧客の登録情報)を1つ作る
- 返ってくる、「uprof_」で始まるIDを、自社の顧客データに保存する
- その顧客のためにClaudeへ送るすべてのリクエストに、IDを付ける
誰のためにプロファイルを作るかは、サービスの形で決まります。
| 通信の相手 | プロファイル |
|---|---|
| サービスに登録した個人 | 1人ごとに1つ |
| 再販先の会社 | 1社ごとに1つ(社内の人ごとではない) |
| 自社の利用 | 作らない(別の組織に分ける) |
制限は問題のある顧客だけに適用
IDが付いていれば、安全上の制限やバン(利用停止)が、その顧客だけに適用されます。ほかの顧客の通信は、影響を受けません。
制限の状態は、3段階で示されます。
| 状態 | 意味 |
|---|---|
| 制限なし | 現在、制限や停止は出ていない |
| 制限中 | 制限は出ているが、バンではない |
| バン | 利用停止が出ている |
制限が出る理由は、詐欺や不正、重大な害のある使い方、利用規約違反、サービスが対応していない地域からの利用など、6種類に分けて示されます。
10月21日に制限の確認機能が追加
最初の公開は10月20日で、翌21日に、制限の状態を確認する機能が追加されました。提供会社は、各顧客のプロファイルを調べて、Anthropicが制限やバンを出しているかを確認できます。
- 状態の取得:顧客ごとに、制限の状態と、出ている制限の詳細(理由、開始日、終了予定日)を確認できます
- 一覧の絞り込み:制限中やバンの顧客だけを一覧にできます
- 通知(ベータ):制限やバンの開始・終了を、通知で受け取れます。利用にはAnthropicの担当チームへの連絡が必要です
顧客に「あなたのアカウントに制限が出ています」と案内する運用が、しやすくなります。
IDを付け忘れると効果がない
最も大事な注意点は、IDを付けていないリクエストには、効果が及ばないことです。公式は、IDのないリクエストが制限を招くと、その制限が組織全体に適用されると書いています。
ほかにも、次の点に注意が必要です。
- 自社の利用は別の組織に:自社の利用と顧客向けの通信を、同じ組織に混ぜないことが勧められています
- Amazon BedrockとGoogle Cloud:IDの形式は確認されますが、プロファイルとの一致までは確認されません。プロファイルの作成も、別の窓口で行います
- Claude Platform on AWS:制限の状態は常に「制限なし」で、制限を理由にリクエストを断ることもありません
登録するだけでなく、すべての通信にIDを付ける運用を徹底して、はじめて効果が出る仕組みです。
料金と個人情報の扱い
User Profilesは、課金の対象ではなく、料金にも影響しません。
- 追加料金なし:使っても、API利用料は変わりません
- 会話の内容は含まない:プロファイルに入るのは、提供会社が送った顧客の情報だけです
- 送る情報は任意:名前や国などを送れますが、すべて任意です。メールアドレスは送れず、必要なら暗号のような値(ハッシュ)で送ります
- 内容は検証されない:Anthropicは、送られた顧客情報が正しいかを確認しません
- 削除できる:顧客が退会したときは、プロファイルを削除できます。ただし、Anthropicが保管する安全関連の記録は消えません
一般の利用者にとっての意味
この機能を使うのは、AIサービスを提供する会社です。AIサービスを使う側の私たちが、直接操作することはありません。
ただし、使っているサービスの提供会社が導入すれば、ほかの利用者の違反の巻き添えで止まるリスクが減る可能性があります。導入するかどうかは各社の判断で、導入しても付け忘れがあれば効果は限定されます。サービスを選ぶときは、提供会社がこうした備えをしているかも、判断材料になります。
まとめ
User Profilesは、1社の違反による制限を、その顧客だけに限定するClaude APIの新機能です。顧客ごとにIDを付け、10月21日からは制限の状態も確認できます。追加料金はありません。一方で、IDを付け忘れた通信は守られないため、運用の徹底が欠かせません。本記事は2026年10月22日時点の公式情報に基づいています。