GPT-6が自らPCを操作

GPT-6が自らPCを操作

AIに質問して答えをもらう時代が、ひと区切りを迎えたようです。OpenAIは2026年9月3日、新モデル「GPT-6 Astra(アストラ)」を公開しました。最大の変化は、賢く答えることではなく、パソコンの画面を自分で操作して仕事を最後まで終わらせる点です。すでにゲーム制作から法務、動画編集まで、世界中で実際に使った報告が相次いでいます。危険性の評価も同時に更新されました。

【出典元】GPT-6 Astra: A new generation of intelligence(OpenAI)

答えるAIから働くAIへ

これまでのGPTシリーズは、質問に対して文章を返すのが仕事でした。Astraはそこから踏み出し、実際のアプリを操作します。OpenAIが挙げる作業は、事務仕事から専門業務まで幅があります。

  • オンラインフォームの記入、CRM(顧客管理システム)の情報更新、カレンダー整理
  • Webで調べて、メールや文書に要約を書く
  • データ分析からグラフ作成、Webサイト制作と動作確認
  • ソフトの導入やテスト、画面に出た不具合の切り分け

公式デモでは、基板設計ソフトKiCadで回路図から製造できる基板の配線図を作る様子や、米国の確定申告書を記入する様子まで示されました。人が手を動かしていた工程そのものを引き受ける設計になっています。

数学の難問を98%正解

性能の伸びは数字にも出ています。難関の数学テスト「FrontierMath Tier 4」で98%を記録し、事実上の満点に近づきました。実際に数学の長年の未解決問題の解決にも貢献し、素数の間隔に関する新しい結果を2件公表しています。

作業の速さも変わりました。画面操作の評価では、従来モデルGPT-5.6 Solと比べて同じ作業を約47%短い時間で終えています。別の指標では1.9倍の速さです。使うトークン(処理量の単位)も少なく、競合のClaude Opus 5より65%少ない出力で高い正答率を出した項目もあります。

マンハッタンを丸ごと再現

公開直後から、開発者やクリエイターの検証結果が次々と出ています。とくに3D制作の事例が目を引きます。

  • 投資家のMatt Shumer氏は、Unreal Engineの中でAstraに1週間与え、マンハッタンの複製を作らせました。「一区画ずつ完璧に」仕上げたと報告しています
  • YouTuberのMatt Wolfe氏は3D未経験の状態から、Blenderで人狼のキャラクターを8分、動かす設定を6分、Unrealでの森林環境を35分で完成させました
  • デザイン専門家のTom Krcha氏は、蒸気機関車の2D図面から、3,295個の編集できる部品に分かれた3Dモデルを生成しました

ゴッホの絵画6作品を統合して歩ける3Dの町を作った例や、1回の指示でゲームを遊べる状態まで仕上げた例もあります。

36秒で開発案件が完了

遊びの範囲にとどまらず、実務での報告も出ています。開発者のMehul Mohan氏は、フロントエンドの開発案件を実装からテスト、画面の確認、自己チェックまで36秒で終えてクローズしました。

ほかにも実践的な例があります。ChatPRDを手がけるClaire Vo氏は、IntercomやGranolaなど4つの情報源から散らばったデータを集め、重複を消し、傾向を見つけて優先順位づけするところまで、ほぼ1回で完了させました。動画編集者のBen Davis氏はFinal Cut Proでクリップ取り込み、音声同期、色調整、タイムライン整理を任せています。免疫学者のDerya Unutmaz氏は、T細胞を解説する5分の動画を、脚本からナレーションまで1つの指示で生成しました。

企業の評価も出そろっています。法務AIのHarveyは「見識ある弁護士のように、文書と確定した記録を区別し、裏づけのない仮定をあぶり出す」と述べました。金融のJane Streetは「本番品質に至るまでの手戻りが少ない」と評価しています。

国内では直売所のPOPを一括制作

日本でも検証が始まっています。農業分野のメディアが行った実機検証では、にんじんの品種「アロマレッド」の販売準備をまとめて任せました。

制作物内容
店頭用A4サイズのPOP、棚札、価格一覧
SNS用Instagramのフィード画像・ストーリー画像、投稿文

品種・本数・価格・産地・農園名の10項目が、PDF2ページとSNS画像ですべて一致していたことが確認されています。ばらばらの工程をまとめて処理できるかを見る検証で、他モデルとの性能差や時短率までは測られていません。

危険度が最高の「重大」に

手放しで喜べる話ばかりではありません。Astraは、OpenAIの安全指針においてサイバー能力が初めて最高危険度「重大(Critical)」に達したモデルです。

安全対策を外した検証では、堅牢に守られたブラウザに未知の弱点を突いて任意のコードを実行し、OSの権限を奪う攻撃コードも作れました。評価の途中で、世に知られていないゼロデイ脆弱性を2件自力で発見しています(開発元へ報告済み)。

そのため公開版では線引きがされています。セキュアなコード審査や修正パッチの作成には使える一方、攻撃の実証コードを作るような高度な依頼は拒否します。防御側の専門家には「Daybreak」という枠組みを通じて、段階的に制限を緩める計画です。

一方で、暴走のしにくさは大きく改善しました。難しすぎる課題を与えたとき権限の範囲を越える行動を、従来モデルは48%の頻度で起こしましたが、Astraは0%でした。

料金と使える場所

提供はChatGPTのPlus・Pro・Business・Enterprise、OpenAI API、Microsoft Azure、AWS Bedrockです。API料金は入力100万トークンあたり$10、出力$50で、キャッシュを使った入力は$1に下がります。2倍速のFastモードは価格も2倍です。

導入時に押さえておきたい注意が2つあります。ひとつは、Enterpriseでは初期状態で無効になっており、管理者が有効にする必要がある点です。もうひとつは安全監視の存在で、ChatGPTやCodexでは作業が一時停止して確認を求められ、APIでは処理そのものが止まります。人が誰も見ていない状態での完全自動化は想定されていません。

まとめ

GPT-6 Astraは、AIの役割を「答える」から「操作して終わらせる」へ移した節目のモデルです。マンハッタンの3D再現や36秒での開発完了といった事例が、その実力を具体的に示しています。同時に、サイバー能力が最高危険度に達し、攻撃寄りの依頼は拒否する線引きも敷かれました。業務で試すなら、フォーム記入や資料整形のように手順が決まった作業から始め、中断されても再開できる進め方にしておくのが安全です。

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